2007年11月22日

互いの苦悩

圭祐はかすみが部屋に倒れていたところから話した。


病院でも暴れて、鎮静剤を打たれて、連れ帰ったら、この状態…。


春日井
「やっぱり大会前にあんなに吐くなんて、おかしいわけだよ。
パニック障害ていうんだろ…おっかさがかかって…」


春日井は貴子がいることを思い出し、ふっと口を閉ざした。


圭祐
「それだって。
家にも5年も帰ってないし、ずっと孤独な部屋で。

生活もずっと制限されていたから、疲れたんだろうな。」


貴子
「でもいいなぁ、家に帰らなくていいなんて」


貴子は自分の毎日のぼやきをぽつんと言った。


春日井
「お前、バカか?」


貴子
「だって、私は教授の娘だからって自転車すら、乗らせてもらえないし。
家からも出してもらえない!
大学院だって行かなかったら、留学させられる。


だから、かすみがうらやましかった。
私だってこんな風に生きたかったのに…」


春日井
「お前、マジムカつく!」


圭祐
「ヴェスパ…」


春日井
「茅野さん、黙っててください!

お前はいいだろ!
本当の親父さんが、お前に期待してくれてる。
だけど、俺の親父は期待すらせず、家族を捨てて逃げたような男だよ!

春日井のおじさんは、自分の子でもない人間に学費や小遣いをあげる、そんなとこで好き放題なんかできるかよ。

お前みたいに金に困らん女なんか安曇野の気持ち、わかるか!」


貴子
「だって、あの神谷の親戚でしょ?」


春日井
「ほんとに…」


圭祐
「本当の親戚は俺だ。


かすみは俺の叔父やいとこに人生を買われたんだ。」


貴子
「人生を買われる?」


春日井
「茅野さん、それ…」


圭祐
「本当だ…
高校2年から大学卒業までの時間を買われたんだ
…月50万で」


貴子
「待ってよ!

かすみは好きで今を生きてるんじゃないの?」


圭祐
「途中までは楽しんでいた…

ただ、義務感と寂しさが募ったりで…壊れた…」


貴子が涙を流していた。


貴子
「なんで?なんでかすみがそんな目に?
悔しいよ!

かすみの学校生活が唯一の自由だったなんて。

先輩のヴェスパに自転車ぶつけるのが、せめてもの自由なんて。

いっつも友達って、授業受けて、メールしあって、私、一番の友達でいたつもりなのに…


わかってあげられなかった…。


一番近くにいるはずなのに、なんにもかすみを知らなかった…。


かすみの苦しみに気づいたり、心開かせてあげられなかった!」


貴子は春日井の背中に泣きついた。


貴子
「先輩、悔しい、悔しいよ!

私、自分の世間知らず具合が悔しいよ!

メールしたら友達。
遊びに行ったら友達…そうじゃないの?


私には…かすみがうらやましくて…
うらやましいから、大切なのに…
大切な人なのにー!」


春日井
「貴子…」


かすみ
「あれ、みんなどうしたの?」


かすみが目を覚ました。


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