2007年11月18日

神が渡る湖

酸素吸入器と点滴を打たれたかすみは、病室で眠っていた。



まだ目を覚まさない。



圭祐
「かすみー!」



圭祐が飛び込んでくる。



圭祐
「O学院大、全国大会だ!
かすみ、起きてくれ!」



貴子も声をかける。



貴子
「やったわよ!かすみ!
あんたの腕で全国勝ち取ったのよ!」



かすみの首が動く。



貴子、圭祐
「かすみ」



かすみ
「あ〜、ノドカラカラ、お水ちょうだい。」



圭祐のゲンコツ。



かすみ
「いったぃなぁ…」



医者
「姫!吸入を大会前に何度やりました?」



かすみ
「2回…」



医者
「朝晩、2回だけです!
いちどきに2回も吸ったら、呼吸だってどうにかなります(怒)」



貴子
「え…まさか
副作用なだけ?」



医者
「どうもそのようです。
あとは、空腹」



圭祐はヘナヘナとしゃがみこむ。


圭祐
「車飛ばして来たのに…」



貴子も大きなため息をついて、外を見た。


貴子
「かすみ、見て!湖…」


貴子が窓の外を指差した。



かすみ
「虹…これが神の渡る…」



貴子
「そぅ、蒸発してる湖と光の加減で起きるらしいけど…


ほとんど見られないのよ、住んでいても」



圭祐
「きれいだなぁ…」



ガッシャーン



貴子
「かすみ、点滴台考えて立ち上がりなさいよ!」



かすみ
「窓の近くで見たいよー」



貴子はため息をついて、点滴台を立ち上がったかすみの横に立てた。



かすみ
「きこちゃん…」


貴子
「何?」



かすみ
「全国大会のソロパート、頼むね」



貴子
「あれはかすみがいるから決めた楽曲で…」



かすみ
「もういいの…
中学時代の悔しさも晴らせた。
これですべて終わり。」


圭祐
「それって退学だぞ?」


かすみ
「わかってる。
あたし、この湖に神様が渡ったら、すべて終わらせようと決めていた。


たまたまそれが今日だった…。
なんの契約もない安曇野かすみに戻る日が来た。」



貴子
「寂しいこと言わないでよ!
大学一年の夏休みに退学するバカいる?
やっと仲良くなれて、先輩もヴェスパの止める位置変えて、かすみ対策ができたのに、本気なの?」



かすみ
「さすがに2日も吐くと苦しいんだよね…
もう薬に頼ってまでの気持ちがなくなったよ…


でもきこちゃんとは、ずっと友達!
不釣り合いだけどね。」


かすみは泣きながら笑った。


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