2007年11月09日

安曇野希

希(のぞみ)は東京で大学生活を送っていた。
いつかモデルになりたくて、大好きなファッション誌の読モに何度も応募した。


ことごとく落選。


心機一転、卒業後はバリバリのキャリアウーマンになった。


職人気質の主人とひょんなきっかけで結婚。
男児を産んだ。


希は息子を会社の託児所に預け、キャリアの道を歩んでいた。


そんな矢先。


原因不明の脱力感。
精神不安定。


かすみの妊娠だった。


一人ぼっちじゃお兄ちゃんがかわいそうて声や、主人が女の子をほしがったため、
かすみは自分自身が望まない出産だった。


産休&育休期間。


託児所にいる息子はともかくかすみの存在が疎ましかった。
会社の規定で、休業中も1人までは託児所を無料で使えるが、2人目…ましてや新生児にはとんでもない額が天引きされる。


保育園もこの年代は待機。もしくは高額な料金。

容赦なくかすみは自分にまとわりつく。
部屋をかきあらしていく。
希自身、病弱な母親だったために、祖母に育てられ、幼児期に母親に甘えた記憶もない。


「かすみなんかいなければよかった!」
…いたずらをしてるかすみに、希はついそう怒るようになった。
泣くかすみの頬をぶったり、自分の感情がコントロールできないのがわかった。


育休が終わり、また格安で2人を職場にあずけら れるようになり、希はキャリア系をまた歩き出した。


かすみが幼稚園に入って、フルタイムパートに転向して、お兄ちゃんに面倒を任せた。


お休みになると、ママ、ママ…と寄り付くかすみ。


そこでかすみに「遊んでほしかったら」の条件を与えた。


電話帳を頭に載せ、家の中を歩く。


たくさんの美容雑誌と鏡に笑顔の練習。


かすみは鏡やゲーム感覚の電話帳におもしろがり、夢中でやった。


かすみ
「ママ、できた!」


得意げにどこまでも電話帳を乗せて歩いていた。

かすみは本をほとんど読まずにいた。
幼稚園の頃からお兄ちゃんが読んであげていてくれたが、お兄ちゃんが読んでくれないと読まなくなっていた。
マンガすら、興味もない。
外遊びに夢中で運動面…短距離が得意だった。


ただピアノを習いたいと言って、楽譜だけはいつも見ていた。
寝物語に希が祖母から聞いた「Rosy」
これだけは寝物語にかすみにも聞かせていた。


それに曲があると知り、かすみはどこからか、楽譜を入手してきて、うれしそうに眺めていた。


自分がいつも読んだ絵本を大事に抱えていたお兄ちゃんのように。


かすみに何かを望むことは今までなかった。


もし、何か望んであげられるなら…


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