2007年11月04日

空虚と充実

かすみ
「犬くん…ううん、幸祐」


かすみは首から十字架のネックレスを外し、犬のぬいぐるみに巻いた。


かすみ
「幸祐、これからずっと一緒だよ…
圭ちゃんとは離れ離れになるけれど…」


ひとしきり泣いたあと、かすみは課題曲の練習を始めた。


国語の並外れたできの悪さに、S大へは技能推薦は不可能に近かった。


S大に近い、O学院大。
S大より、はるかに楽団のレベルは上だった。
そこへの技能推薦を勧められた。
条件は、楽団に所属し続けること。それだけ。
辞めると同時に退学になる。


残された一年。
国語をがんばるか
音楽をがんばるか…


フルート歴2年…
日本人歴18年…


かすみ
「てか、どんな大学でも名前間違えたらダメか…
安曇野…なんて難しいんだよぉ!」


ベッドに大の字になって、かすみは嘆く。


中途半端だ…何もかも。
中途半端すぎる…あたし自身が。
このままでいいの??
このまま圭ちゃんと一緒になれる?


自分てものに疑問が湧いてきた。
ありさも愛し抜けなかった。
圭祐とも、変な形でつながってるだけのよう。
幸祐の母親も1ヶ月。


自分に何かやり通したものがない。


ルーズすぎる…。
自分自身に憤りを感じた。


それと対象的に…


圭祐
「幸祐、おはよう」


毎朝、木彫りの犬に声をかけるのが日課の圭祐。


彫り抜いたことで、自分の心の何かが吹っ切れたような気がした。


かすみの父が彫ってくれた瞳はかすみによく似てる。


クルクルして、いたずらっ子の目。


圭祐
「行ってくるな!いい子にしてろよ。」


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